カフェでベーカリーで時々屋台。coffee, bread, veggie dishes, and mobile kitchen.

恋しい2008/03/12 17:20

数年前まで鎌倉にあった「今小路」。 それは、最高においしいおばんざいやさんでした。 (看板には「関西うどん 今小路」と書かれていましたが。) こじんまりとしたカウンターのみのお店。 メニューは、ごく普通のおばんざい。ピリピリこんにゃく、きんぴらごぼう、おなます、春にはきゃらぶき、豆ごはんやタケノコごはん、梅雨の明ける頃にはゆかりごはん、夏には立派なゴーヤを使ったお料理、冬にはあつあつのけんちん汁。そのほかには焼き魚、煮魚、アジフライ(絶品!)、生姜焼き、茄子のはさみ揚げ、etc,etc、それはそれはたくさんのメニューが並んでいました。お味噌汁はきちんと出汁をとったもの、何年も大事に手をかけられた糠床。そしてお漬け物。 それらはどれも、抜群においしかった!けれども奇をてらったようなものは一つもありませんでした。基本からアレンジしたようなものも一つもありませんでした。盛りつけに凝っていたりもしませんでした。 あのおいしさは、きっとあのおいしいゴハンをつくってくれた あのかたの年輪とでもいうのか、歴史というか、そういったものだったのだと思います。いつもお店をでると、こころもカラダもぽっかぽかになって「あぁ、温泉に浸かったみたいだよねぇ。」と私たち二人で云いあったものでした。 お店が忙しくてどんなに疲れていても、今小路さえあれば大丈夫!!そんな存在だったのです。 そしてもうひとつ、嬉しかったのは、年齢的に云うと私の母よりも上のそのかたが、いつも私に敬意をはらってくださった事でした。(同業者として。) 私は日々、全力投球で料理をし、パンを焼いています。 もし勝負するとしたらそれは「自分自身」とであって、 それ以外の「誰か」とか「何か」と勝負しながら料理はつくりたくない、と思っています。 それでも、もしも勝負するものがあるとしたら「決して奇をてらうことなく、ただ純粋においしい料理をつくる事」だと感じています。 例えばタイの道端でつくってもらうお惣菜。 簡単な容器に入っているだけでも、顔がほころぶほどオイシイ。(写真)器よりまず中身。そういうところで勝負したいのです。 あぁ、今小路。 時が経てば、恋しさも少しは減るものかと思っていましたが、どうやら恋しさは募る一方のようですよ。

PS 今小路ファンのみんなは、小さなお店に負担をかけないようにするために、極力お店の名前は内緒にするようにしていました。 もう時効だと思うので、打ち明けます。

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