トコ、お疲れさまでした。もういいぞ。 ― 2012/02/08 14:22
6時間にも及ぶ手術を終え麻酔から醒めて、目を動かしたり口を動かしたり、これで一安心だ。またな!と声を掛けた。
昨日は疲れがどっと出て店は閉めたけど、BOSSは面会に行き、俺は一人で発送のパンを焼いた。夕方帰宅したBOSSから様子を聞きムービーを見せてもらった。術後の経過は順調だが、肝臓が元々弱っているので注意しながら、また感染症に気をつけて体力を戻そうぜって事だそうだ。
発送を終えた後は腹が減ったので、ひさびさ「とんかつしょうざん」へ。そしたら近所のヒラハラ一家がいた。トコの経過などを話したり何だか日常が少し戻って来た感じがした。今晩はぐっすり眠れそうだ。
翌朝7時26分、病院からの電話で目が覚めた。トコが吐いて心停止し心臓マッサージをしているという。そんな馬鹿な、まだ死ぬはずじゃない。急いで車で川崎まで。インター出入口の赤信号がもどかしい。
8時30分頃、病院に到着するとすぐにトコのところへ案内された。担当の先生が心臓マッサージをしながら報告してくれる。
7時の見回り時には特に問題はなかったそうだが、その数分後に吐いて気管が詰まったのが原因らしいが何故吐いたのかは分からない、おそらく肝臓の機能に関係しているだろう、と。
心拍/拍動数、上下血圧、酸素濃度など何れも非常に低く、出っぱなしの舌も目も乾いてちっとも動かない。声を掛けても全く反応しない。もう2時間近く心臓マッサージしているが、止めたら全てが止まる。何時まで続けてもこの状態は変わらないという事がはっきり分かった。だが後一回、もう一回だけ心臓を押したらひょっとしてどの数値も高くなるかもしれない、そう考えるとなかなか先生にもう結構です、といえない。名前を呼んだり話しかけて手を握ってやったり頭や喉をさすってもやっぱり無反応だった。何度か先生に言おうと試みて言えず。何度も数字を見上げて、やっと声に出した。もう止めましょう、と。
止めるとあっという間に胸の鼓動は弱くなりすぐに止まった。顔の表情はまったく変わらなかった。9時30分頃。
帰り支度の間、ラウンジから多摩川を見渡す。雲が厚くたれ込めているけど、何羽も鳥が飛んでいる。河原では犬が飼い主と散歩している。トコはきっといつもみたいに風の匂いを嗅いでいるにちがいない。少し雲の下が明るくなって来たかも。
白い段ボール箱に少し元気の無い花束と一緒に入ったトコを引き取る。まだ暖かいじゃないか、フワッフワの毛でモフモフしてえな、こんちくしょう。よく頑張ったなあ。随分爪が伸びてるぞ、ここんところ切ってやれなかったからなあ。
さあトコ、家へ帰るぞ。